研究概要 |
1H-アズレニウムイオンを部分骨格にもつ種々の炭化水素陽イオンの合成と熱力学的安定性の評価を行った。トロピリウムイオンにスピロ[4,5]アルカジエンが二重に縮環したイオンではそのpK_<R+>値が13.2と極めて高い安定性示すことを見出した。その安定性はπ-π共役、σ-π共役、ならびに誘起効果の3つ効果が同調して強め合って作用する、ハイブリット効果によるものと提案できる。1,1-ジアルキル置換-1H-アズレニウムイオンの安定性評価から置換基が嵩高い場合には溶媒和による安定化が減少し平衡に影響を与える見出した。また、1位にアダマンチル基のスピロ接合した置換体では炭素数が多いにもかかわらず誘起効果による安定化が小さく、その原因を探るために結晶構造解析を行ったところ、アズレニムイオン部の平面性が立体障害によって損なわれており、溶媒和と相まって安定性が低下すると考えられる。さらに、1位にフェニル基置換した化合物とフルオレンのスピロ結合した誘導体を合成し、これらのイオン種では1位の置換炭素がsp_2炭素となることからその電子求引性からイオンが不安定化することを確認した。また、その二つのいずれの誘導体においても分子内電荷相互作用に基づく吸収を示すことを見い出した。特に、後者においてはフルオレン部とアズレニウムイオン部が互いに直交した構造をもつのにも拘わらずこのような吸収をもつことを新たに発見することができた。
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