研究概要 |
1.1,1-ジアリールエテンラジカルカチオンの反応性:標題エテンを酸素,またはアルゴン雰囲気下,9,10-ジシアノアントラセンを増感剤とした光誘起電子移動(PET)反応に付した.2位置換基として嵩高い基を有し,1位置換基としてp位に強力な電子供与性基を有したフェニル,他方の1位置換基としてp-メチルフェニル基を有したエテンは,二重結合の片道異性化を示した.増感剤の効果から,スーパーオキシドの関与が示唆された.分子軌道計算から,片道異性化するカチオンラジカル種のみディストニックな構造(分離型カチオンラジカル)が最適化された.他方のエテンでは通常のプロペラ型構造が最適化された.これらカチオンラジカルが活性酸素と相互作用しEからZに,他方ZはZのまま反応が進行し,結果的に片道異性化が誘起されたと考えられる. 2.1,1-ジアリールケトンオキシムO-メチルエーテルラジカルカチオンの反応性:標題化合物またはその前駆体オキシムに,再結晶でシン,アンチが分離できるものがあった.こうして得られた単一幾何異性体のPET反応を検討した.その結果,アリール基の性質に応じてPET片道異性化や三重項双方向異性化,直接光励起による片道異性化など,その光反応性は大いにアリール基の性質に依存したものであった.またその際片道異性化する基質では,分子軌道計算により,p-メチルフェニル基からの水素シフトにより生成するカチオンラジカルが,さらに安定とわかった.このことを,重水素ラベル実験によって確認した. 3.2-フェニル-3H-インドール1-オキシドの光反応性:直接光反応では,脱酸素化による2-フェニルインドールの生成を認めた.他方PET反応では,基質の原子価異性化によるオキサジリジンの生成を経て,カルボニルイミンの生成を示唆する結果を得た.
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