研究概要 |
本研究では窒素を含む2,3-ジオキサポリシクロアルカン類を合成の標的化合物とし、研究代表者が開発した酢酸マンガン(III)による酸化的ラジカル反応を利用した1,2-ジオキサン骨格生成反応を用いて、抗マラリア活性を持つ新規な環状過酸化物の合成を目的とした。 1.4-ピペリドン-3-カルボキシレート類とアルケン類の酢酸マンガン(III)による触媒的酸化反応から目的とする2,3-ジオキサビシクロ[4.4.0]デカン類が高収率で得られた。この反応により新規な2,3-ジオキサビシクロ[4.4.0]デカン類が18種類合成できた。縮環部分の立体化学はcisであることを、X線単結晶解析により確認した。合成した2,3-ジオキサビシクロ[4.4.0]デカン類について抗マラリア活性試験を実施した。期待された活性は発現しなかったが、抗菌性を見出した。 2.4-ヒドロキシ-2-キノリノン類とアルケン類の同様の反応から、新規なビス(ヒドロペルオキシド)類が生成することを見出した。この化合物の構造決定はX線単結晶解析により行った。その結果、ヒドロペルオキシ基はキノリノン環のカルボニル酸素と水素結合することによって安定化していることが推察された。 3.1,2-二置換ピラゾリジン-3,5-ジオン類とアルケン類の同様の反応からも、新規なビス(ヒドロペルオキシド)類が生成することを見出した。15種類の1,2-二置換ピラゾリジン-3,5-ジオン類を合成し本反応にかけたところ、相当する15種類のビス(ヒドロペルオキシド)類を高収率で得ることができた。ビス(ヒドロペルオキシド)類の構造はX線単結晶解析により決定された。その結果、不安定と考えられるヒドロペルオキシ基はピラゾリジン-3,5-ジオン骨格のアミドカルボニル酸素と結晶中で分子内水素結合して安定化していることが確認された。 4.アルケン類を加えないで1,2-二置換ピラゾリジン-3,5-ジオン類を直接酢酸マンガン(III)存在下による触媒的酸化反応にかけたところ、ヒドロペルオキシ基が直接ピラゾリジン-3,5-ジオン骨格に導入されることを見いだした。しかも、この反応は定量的に進むことがわかった。4-ヒドロペルオキシピラゾリジン-3,5-ジオシ類の構造も、X線単結晶解析により決定された。 5.1,2-二置換ビス(ヒドロペルオキシアルキル)ピラゾリジン-3,5-ジオン類や4-ヒドロペルオキシピラゾリジン-3,5-ジオン類には、弱いながらも抗マラリア活性があることが確認された。
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