研究概要 |
本研究の目的は、結晶としてあらかじめ単離したヘテロ金属錯体の熱分解による混合酸化物の調製法を新しく提案することである。この方法は、原子レベルで均一な高表面積の混合酸化物を調製する方法として非常に有望なものである。ここでは、主に、d-f元素系を対象とした。 LaとCoがシアノ基やオキサラト基で架橋された三次元ネットワーク構造をとっているLa[Co(CN)_6]・5H_2OおよびLa[Co(ox)_3]・8.5H_2Oを熱分解した結果、600℃でペロブスカイト型酸化物LaCo_3の単相になった。この温度は、La_2O_3とCoOの(1:2)混合物を前駆体とした場合の生成温度1000℃やLaとCoの(1:1)水溶液からシュウ酸塩として共沈させたものを前駆体とした場合の生成温度1200℃よりもはるかに低温である。EPMA測定から、ヘテロ金属錯体から得られたLaCoO_3は、均一性においても、非常に高いことがわかった。 Bi_<0.5>La_<0.5>[Fe(CN)_6]・4H_2Oや[La_2Cu(C_4O_4)(H_2O)_<16>]・2H_2O(H_2C_4O_4=3,4-dihydroxy-3-cyclobutene-1,2-dione)を合成し、それらの熱分解を行った結果、500℃および700℃で、それぞれBi_<0.5>La_<0.5>FeO_3およびLa_2CuO_4の単相になった。 二核錯体LaNi(dhbaen)(NO_3)(H_2O)_2(H_4dhbaen=N,N'-bis(3-hydroxysalicylidene)ethylene-diamine)を熱分解すると、600〜900℃の範囲でLaNiO_3の単相が生成した。これに対して、La_2O_3とNiOを1:2で混合したものを1000℃で処理してもLaNiO_3にはならなかった。 このように、ヘテロ金属錯体は、複合酸化物の前駆体として非常に優れていることがわかった。
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