研究概要 |
本研究ではトリプチセン誘導体、アズレン誘導体、パラ置換ベンジルアルコール、アルキル尿素などの有機結晶の混晶系における局所的な電子非局在の可能性、また混晶系特有の熱物性(特に相転移挙動)などを研究した。 局所的D-A相互作用を示すトリプチセンキノン(TPQ)・トリプチセンヒドロキノン(TPHQ)混晶系の新たな合成法を開発した。ビス(ブロモメチル)トリプチセンキノン(bis-BrMe-TPQ)の分子・結晶構造を決定した。TPQ/TPHQ系混晶と極めて類似した局所的D-A相互作用を起こすbis-MrMe-TPQ・ビス(ブロモメチル)トリプチセンヒドロキノン(bis-BrMe-TPHQ)系昆晶を発見した。また、bis-BrMe-TPQのトルエン、P-キシレン、m-キシレン、メジチレンとのクラスレート結晶の構造を決定し、ゲスト・ホスト間D-A相互作用の可能性を示した。 ヒドロオキシ-トリプチセン(Hydroxy-TP)・ビス(ヒドロオキシ)-トリプチセン(bis-Hydroxy-TP)系昆晶を研究する過程で後者に4員環型水素結合系と相転移を発見した。結晶構造から両者の混晶系に特異な誘電性質が期待された。 結晶構造から、6,7-ジメトキシトリプチセンキノン(dMeO-TPQ)ではTPQ/TPHQ類似昆晶の形成が困難であり、5,12-ジヒドロ-o-5,12-ベンゼノナフタセン-1,4-ジオン・ベンゼン(2:1)ではゲストを変えた昆晶の可能性が示唆された。 パラ置換ベンジルアルコール系混晶における転移挙動の著しい組成依存性、および重水素化効果を詳細に研究し転移機構に関する情報を得た。 一連のアルキル尿素誘導体の中でオクチル誘導体が異常に大きな相転移エントロピーを示す事実、またヘプチル誘導体との混晶の転移挙動が顕著な組成依存性を示すことを発見した。
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