研究概要 |
1 ホウ素,スズ,ケイ素,亜鉛などの有機金属化合物は,高い化学的選択性を実現する反応試剤として有用性が広く認識されている。そのうち,アリール金属化合物については,最近,官能基をもつ化合物の合成法が開発され,理想的な最短段階での多官能性有機化合物合成が可能になった。しかし,有機金属化合物自身の調製にかかる環境負荷も含めて考えれば,亜鉛以外は理想から程遠い(亜鉛の原子効率は100%である)。この亜鉛の効果(新しい亜鉛効果)を認識し,活用する反応設計が今後の有機合成では重要になる。 2 我われは,TMUやDMFなどの極性溶媒中,市販の亜鉛粉末を用いて行う官能基をもつアリール亜鉛化合物の簡便合成法を開発している。ところで,有機金属化合物の反応の多くがTHFなどの溶媒中で行われることを考えれば,上記溶媒の極性,配位能が目的反応の進行を妨害する可能性がある。 より極性の小さい溶媒としてエーテル系溶媒中で反応を進行させる方法の開発に取り組み,アリールハロゲン化物の反応性に応じて,THFから,より高沸点のジグライム,トリグライムへと溶媒を適切に選択し,使用温度を調節するとき,各種アリール亜鉛化合物のエーテル溶液が簡便に合成できることを見いだした。 次に,この溶液を使用し,アリル求電子剤とのパラジウム触媒反応を円滑に進行させることに成功した。 また,極性溶媒では不可能なルイス酸との共存性に着目し,アリール亜鉛化合物とアルデヒドとの反応を検討し,この反応がTi錯体の存在下,円滑に進行することを見いだした。
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