研究概要 |
ヒ素の間接固相吸光光度法による定量について検討を行い,次のような方法を確立した。 1)ヒ素(III)を,微細な陰イオン交換樹脂共存下にピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウ(APDC)と,pH1.5において反応させ,生成した錯体を疎水性相互作用により樹脂相に抽出する。 2)ヒ素(III)-APDC錯体を保持した樹脂をろ過により母液からメンブランフィルターに薄層として分離し,Cu(II)を含む溶液に懸濁させることにより,ヒ素(III)-APDC,をCu(II)-APDC錯体に変換する。 2As(APDC)_<3,樹脂>+3Cu^<2+>→3Cu(APDC)_<2,樹脂>+2As^<3+> (1) 3)銅(II)-APDC錯体を保持した樹脂をろ過により母液からメンブランフィルターに薄層として分離し,得られる黄色の樹脂相の吸光度を,反射法または透過法により測定する。 4)ヒ素(V)はチオ硫酸塩でヒ素(III)に還元することにより,同様に定量できる。 5)デンシトメータを用いて積算反射吸光度を測定する方法と,通常の分光光度計を用いて透過吸光度を測定する方法を比較検討し,それぞれの分析条件の最適化を行った。どちらの方法も,50mlの試料を用いることにより,環境基準である10ppbのヒ素を定量できる感度を有していることが明らかとなった。 6)ジエチルジチオカルバミン酸塩(DDTC)を用いて,共存イオンを分離する方法を検討した。ヒ素(III)-DDTC錯体の樹脂相抽出pH範囲はpH3〜7と狭いことから,EDTA共存下に試料のpHを7.3にしてCu(II),Ni(II)及びCo(II)等をDDTC錯体として抽出分離したのち,ろ液のpHを2.5に調節してMo(VI)及びV(V)を抽出分離することにより,共存イオンの影響は除去できることを明らかにした。
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