研究概要 |
1.テトラヨードフルオレセイン(TIF)やエオシン(EO)はバルキーな二塩基酸染料である。これらはpH8以上でマイナス2価として存在し、セチルピリジニウム、ベンゼトニウムなどの第4級アンモニウムイオン(R_4N)と2:1の赤色イオン会合体を形成する。この会合体形成に基づく第4級アンモニウムイオンの検量線は原点を通る直線には成らず、二次曲線を形成する。従って定量範囲は限定される。しかし、この会合系にキニーネ(QN)、キニジン(QD)などの塩基性の強いアミンを一定量添加すると新規な会合体が形成されることを見出した。TIFやEOへのQNの付加錯体はTIF(QN)_2を形成する。R_4Nが添加されるとTIF-QN-R_4N錯体が形成され、極めて直線性のよい検量線が得られた。またQN共存に伴う相乗抽出効果が発現し、モル吸光係数も数倍増幅されることが判明した。そこで、類似のシンコナアルカロイドの添加効果を検討した。その結果キニジン、シンコニジンの共存下において最も大きなモル吸光係数が得られ、検量線の相関係数も1.000-0.999となり、2:1会合体よりこれらが大幅に改善されることが分かった。このようなマイナス2価の染料に異なった陽イオンが二つ付加し、しかも定量的である例は今まで報告されたことはなく、大変興味深い現象である。 2.室内環境中のホルマリンはアレルギーなどを誘発する大気汚染源として注目されているが、JIS法による吸光光度法では対応できない。そこで新規の蛍光誘導体化の検討を行った。その結果5,5-dimethylcyclohexane-1,3-dioneがCH_3COONH_4共存下でホルマリンと反応し、蛍光誘導体を形成することを見出した。この反応には熱特性があることが分かった。この反応をフローインジェクション分析法に導入したところ、1-10 ppbのホルマリンが迅速に測定でき、実用的にも有用である。 3.1,1-phenが共存すると、Fe(III)/Fe(II)系酸化還元電位が上昇し、Fe(III)はシステインをシスチンへ定量的に酸化し、赤色のFe-phen錯体を形成する。しかし、C(II)が添加されると反応速度が2000倍促進されることを見出した。アスコルビン酸にも同様な現象が発現することが分かり、システインとアスコルビン酸の同時FIA分析法を構築した。このシステムにより二成分を精度よく分析することが可能となった。 4.テトラフェニルボラン、TBPE染料イオン、アミンとの間のイオン会合力の差を利用して滴定による塩基性有機化合物の逐次同時定量法を開発した。これは簡易目視分析法として有用である。
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