研究概要 |
窒素は光合成系タンパク質の構成には窒素が不可欠であり、多くの自然生態系で植物の成長の制限要因となっている。窒素をいかに効率よく利用するのかは植物の生存・成長・繁殖に重要な意味を持つと考えられている。本研究では、異なる標高間・緯度間など、異なる温度環境に生育する植物が、光合成においてどのように効率よく窒素を利用しているのかを調べた。 ・マレーシアキナバル山の異なる標高に生育する植物の現地での光合成窒素利用効率(光合成能力/窒素含量比)を調べ、高標高の植物ほど光合成窒素利用効率が低いことを明らかにした(Hikosakaetal.2002)。 ・冷温帯に属する八甲田山ブナ林(青森県)と中間温帯林に属する東北大学植物園コナラ林(宮城県)において、林内に生育する種の葉レベルの窒素利用効率(葉生産量/葉に分配された窒素量)を調査した。落葉樹は高い光合成窒素利用効率のため、常緑樹は長い葉の寿命によって同等の窒素利用効率を実現していることを明らかにした(Yasumura et al.2002,Yasumura et al.in preparation)。 ・同一種が異なる温度にさらされたときに光合成系にどのようなダメージ(光阻害)を受けるのかを調べるための手法を確立した(Kato et al.2002a, b,2003)。その手法を用いて、25℃で育成したシロザの葉を10〜35℃の様々な温度にさらしたときの光阻害の程度とその違いをもたらす原因を調べた。その結果、シロザ葉は低温で光阻害が起こりやすく、その原因は主にダメージを受けた光化学系IIの修復能力の違いに由来することが明らかとなった(Tsonev and Hikosaka, in preparation)。 ・種間で光合成窒素利用効率が違うことが植物の成長や葉群の構造にどのように影響するのかをモデル化した(Hikosaka 2003)。
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