配分額 *注記 |
3,800千円 (直接経費: 3,800千円)
2003年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2002年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2001年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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研究概要 |
孵化能力を持たない栄養卵は,兄弟姉妹間のカニバリズムのある状況下で親子間の利害の対立を軽減する雌親の戦略として進化したものと考えられているが,特殊な親の投資であるという見方もある。本研究の目的は,この栄養卵の存在が確認された半翅目ツチカメムシ科の亜社会性種を対象に栄養卵投資・消費の適応度損益とその変動要因,この要因の変化に伴う雌親の栄養卵投資における意志決定様式を明らかにすることにあった。主な結果を以下に述べる。 栄養卵投資と適応度損益:ミツボシツチカメムシは,受精卵を卵塊として産んだ後,栄養卵を徐々に産み足した。大型の雌親ほど受精卵と栄養卵が増加する傾向があり,両者の数の間にトレードオフは認められなかった。また興味深いことに,受精卵当りの栄養卵数は雌親の体サイズが増すにつれて小さくなっていた。一方,ベニツチカメムシの雌は前者とは異なり,受精卵と栄養卵を一度に産下した。また両種において栄養卵は形態的な分化を遂げており,孵化後短時間で幼虫に吸汁された。この食卵の際,胚子発育によって栄養卵を識別することが示唆された。幼虫の餌条件と栄養卵の有無を組み合わせた実験によって,両種共に栄養卵の存在が孵化幼虫の生存・発育に寄与し,また栄養卵の適応価は幼虫の餌環境によって異なることが明らかになった。 栄養卵投資の変動要因と意思決定:種子生産の異なるヒメオドリコソウとオドリコソウ個体群間でミツボシツチカメムシの繁殖形質を調査し比較しところ,雌親の体サイズや受精卵数,栄養卵数が異なることが判明した。さらに,産卵前の雌親を異なる餌条件で飼育し繁殖を比較する実験の結果,厳しい餌条件下で孵化幼虫当たりの栄養卵投資が高まる母性効果が明らかとなった。これは,予想される幼虫の餌環境に応じて栄養卵投資が適応的に調節されていることを示している。
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