研究概要 |
マウス胚唾液腺の分枝形成に関与する遣伝子を探索し,その遣伝子の機能から分枝形成機構を明らかにすることを試みた。分枝形成に関与する遺伝子として,分枝している唾液腺上皮と分枝していない唾液腺上皮との間で発現量に差のある遺伝子をスクリーニングすることにした。唾液腺の場合,単離した上皮を基底膜様物質マトリゲルで覆い,培養液にEGFと血清を加えて培養すると盛んに分枝し、FGF-7のみを加えて培養すると分枝せずに伸長する。そこで,両者の間でサブトラクションをおこない,EGF存在下の方で高発現の遣伝子を濃縮した。得られたサブトラクション済み産物をクローニングし、約200クローンの中からFGF-7存在下より、EGF存在下の方で高発現のものを選択し,シーケンスをおこない,その部分配列からホモロジー検索をおこなった。その結果,既知のもの7個,ESTクローン2個の計9個の分枝特異的遺伝子の候補を同定した。 上記の候補遺伝子はインビトロの培養系で発現が上昇しているものであるため,インビボでも分枝特異的に発現が見られるかを検証した。13日胚の唾液腺原基をStalk部分(分枝しない),Lobule部分(分枝する),上皮を含まない間充織の3部分に区分し,14日胚についてはStalk部分,Lobule部分の2部分に区分し,それぞれについてRr-PCRをおこない,各遣伝子の発現量を比較したLobule部分でのみ発現が見られ,Stalk部分,間充織では発現が低いものが目的の遺伝子であるが,この発現パターンを示すものは存在しなかった。本研究において,分枝特異的遣伝子を見つけ出すことに一歩近付いたが,まだその確定にはいたっておらず,さらなる研究の持続が必要である。
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