研究概要 |
エクジソンリン酸化酵素Ecdysone kinase(EKinase, ATP : ecdysone phosphotaansferaseは,遊離型エクジソンを基質としてエクジソン22リン酸(E22P)の生合成を触媒する酵素である.この酵素は,今のところ昆虫のみで見出されたユニークな酵素であるが,酵素化学的な解析はほとんど行われていない.そこで本研究は,リン酸抱合体生成の生理的な意義を明らかにすること,リン酸化酵素の精製と遺伝子の解析を目的として行われた.まず,E22Pの生理活性を調べるためにカイコのエクジステロイドレセプター(BmEcR/BmUSP)を遺伝子工学的に合成し,レセプターとE22Pの親和性を他のエクジステロイドのそれと比較した.その結果,E22Pの親和性はエクジソンの約3%,20-ヒドロキシエクジソンの約0.02%であった.この結果は,E22Pは不活性型であることを示している(Makka et al.,2002).この結果と,カイコの卵巣に大量に蓄積したE22Pが卵へ移行し胚発生の最中に脱リン酸化されること(Yamada and Sonobe, 2003)と合わせて考えると,リン酸抱合体はホルモンの貯蔵的役割を担っていると考えてよさそうである.次に,EKinaseの測定法を確立し,カイコの卵巣を材料として精製を試みた.EKinaseは可溶性画分に存在し,陰イオン交換,金属キレート,ゲルろ過,アフィニティーなどのクロマトグラフイーにより精製が進められた(眞下・園部,2003).現在まで,電気泳動的に単一のバンドに精製できたが,時間的な都合で遺伝子解析までは至らなかった.
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