研究概要 |
本研究の過程で、イトマキヒトデ(Asterina pectinifera)のGSSはこれまで部分的に知られていた別種のヒトデ(キヒトデ、Asterias amurensis)のGSS(MW〜2,100)と比較して分子量がおよそ4,700と大きく異なることが明らかになった。しかしほぼ単一のペプチドまで精製に成功したイトマキヒトデGSSであるが、量的な問題でアミノ酸配列まで決定できなかった。現在出発材料を増やし引き続きGSSの同定に向け実験を進行中である。一方、棘皮動物の特異的神経ペプチド(SALMFamide, S1)の抗体を用いて卵巣・精巣を観察したところ、これら生殖巣表面に神経ネットワーク構造が存在することが明らかになった。神経ネットワーク構造は卵巣・精巣とも基底膜の外側に分布していた。このことは、これまで卵成熟期においてGSSは放射神経から分泌され、体腔液を介して生殖巣に作用していると考えられていたが、卵巣・精巣の表面を囲む神経細胞から直接分泌されそれぞれ濾胞細胞や間細胞に対して1-MeAde生産をうながす可能性を示唆している。さらに、S1ペプチドに放射神経からのGSSの分泌を抑制する働きがあることを見出した。S1ペプチドは1-MeAdeによる卵成熟誘起作用には何ら影響が認められなかったことから、繁殖期におけるGSS分泌に関連している可能性が高い。
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