研究概要 |
新しい血管退縮因子の受容体が見いだされれば,それは血管内皮細胞の持つ死の制御スイッチであり、血管組織の退縮機構解明に非常に役立つと考えられる。退縮因子のプロテアーゼは非常に基質特異性が高いので、退縮因子によって特異的に切断されるような蛋白質を見つけ出せば,それは退縮因子の活性発現に必要な受容体である可能性が高い。そこで今回の研究では,血管内皮細胞にプログラム細胞死を誘導する血管退縮因子の切断標的蛋白質を精製,アミノ酸配列を解明し,本体を明らかにするとともにその作用様式を明らかにすることが目的であった。その結果、実際に切断標的を配列決定可能な量まで精製することに成功し、N末端アミノ酸配列の決定により切断蛋白質の本体を特定した。またこの蛋白質の中和抗体を用いることによって、血管内皮細胞の細胞死に関与することを証明した。まず細胞培養上澄みに検出される退縮因子によって切断された退縮因子標的の断片を大量に精製した。この結果、配列決定可能な数本の標的断片が得られた。これらのN末端アミノ酸配列の決定をしたところ、一つの蛋白質(VAPT・仮称)が本体であることが分かった。この蛋白質の切断を阻害する目的で、切断部分に対する抗体によって血管退縮因子作用を中和させたところ、実際に血管内皮細胞の細胞死が抑制され、VAPTが血管退縮因子による細胞死に強く関与していることが分かった。今後、この血管退縮因子標的VAPTの作用様式を調べることにより、血管退縮因子作用の完全阻止を目指し、ヘビ毒障害の阻止や、血管形成維持機構の解明に寄与したい。
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