研究概要 |
本属は、分類学的混乱があったが、再検討を行うと未記載種が3種も認められた。それは、アンダマンヒゲダイ(仮称)Hapalogenys merguiensis Iwatsuki, Satapoomin, and Amaoka, 2000,ヒゲダイHapalogenys sennin Iwatsuki and Nakabo, in press,およびオーストラリアヒゲダイ(仮称)Hapalogenys australis (to be accepted)である。更に3種の再記載を行った。ヒゲソリダイHapalogenys nigripinnis (Schlegel in Temminck and Schlegel, 1843),セトダイHapalogenys analis Richardson, 1844,およびシマセトダイHapalogenys kishinouyei Smith and Pope, 1906である。なお、シマセトダイに似て、フィリピンルソン島西方海域で採集された、腹鰭軟条が糸状となる特徴を持つ4尾の標本は、亜種以上種以下と考えられ、標本数が十分得られなかったので今後の課題とした。従って、本属魚類は、インド-西部太平洋に合計6種が認められ、それらはお互いに概ね分布域が重なっていなかった。これら同じ南・北半球の温帯域にかけて若干棲み分けて分布・生息しているように思われた。なお。アンダマンヒゲダイに関しては、おそらく北部のベンガル湾北部にも分布していると思われ、今後注意が必要である。 本属の帰属に関しては、従来イサキ科に含められていたが、多くの異なる特徴を持ち、どの科に属するか不明(incertae sedis)であったが、結論は得られなかったものの、別科Hapalogeniidaeに格上げすべきであると解剖学的検討から考慮された。類縁種との検討が十分ではないので、学問的にはまだ不十分である。しかし従来知られていなかったが、マツダイ科(1属1種)マツダイLobotes surinamensisの幼魚時期にのみ下顎に極めてよく似る小孔があることが判明した。従って、イサキ科を含めて、本属魚類は類縁のある科の原始的な形質を有すると考えられ、遺存的な科である可能性が大きいと考えられた。今後の課題としたい。
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