研究概要 |
2001年から2004年に北海道から沖縄までの185地点で新たに採集した標本の分類学的観察とこれまでの報告をもとに,国内における水生ダニ類の分布と生息環境をとりまとめ,さらに,分類体系の再検討行ったうえで,国内に生息する水生ダニ類の目録を作成した. まず,国内からこれまでに記録されているミズダニ類について,分布や生息環境のデータを整理した.さらに,2001年から2004年までの新たな調査で得られた知見をこれに加え,属レベルでの国内の分布と生息環境をとりまとめた.その結果,ナガレダニ属・アオイダニ属・ケイリュウダニ属・オヨギダニ属・マガリアシダニ属は全国の河川や細流に広く分布していることが明らかになった.一方,ヌマダニ属・カイダニ属・ツチダニ属・ヨロイミズダニ属については,地理的な要素よりも地溏や池沼といった生息環境の特徴によって分布が規定されていることが示唆された. 次に,今村泰二博士の研究をはじめとする日本産水生ダニ類に関する文献およびそれらの研究に用いられた標本の調査を行い,Viets(1987)に基づいて種から科までの分類体系を再検討しながら日本産水生ダニ類の目録を作成した.その結果,日本からこれまでに28科37亜科53属119種のミズダニ類と,1科5亜科13属37種のウシオダニ類が報告されていることが明らかになった.これに伴って,これまで和名が与えられていなかった分類群については新たに和名を与え,分類学的に混乱を招く恐れがある和名に関しては改称を提唱した.また,観察に使用した今村泰二博士のミズダニコレクション1541枚について,照合と修復を行い標本リストを作成した.加えて,国内における水生ダニ類に関する研究の現状を明らかにするために,記載論文を中心とした文献目録を作成した.
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