研究概要 |
諸説入り乱れている上位真骨魚類(とくに棘鰭類内部)系統解明の第一段階として,どのような包括的単系統群が認められ,それらがどのような相互関係をもつのか,計48種の真骨魚類から得られたミトコンドリアゲノム全塩基配列データを用いて大域的な系統解析を行った.その結果,さまざまな統計値によって強く支持される頑健な系統樹が得られ,系統樹の最上位に位置するスズキ類を除く上位真骨類系統の概容が明らかになった.それとともに,いくつかの分類群(側棘鰭類・キンメダイ目・カンムリキンメダイ目)について系統学的問題が存在することが明らかになった. そこで,この問題に対処すべくこれら3つの分類群と他の上位真骨類から新たに計54種をリストアップし,これらのミトコンドリアゲノム全塩基配列を決定した.計100種からなる形質行列を作成し,系統解析を行った.その結果,側棘鰭類についてはまったく系統学的実体がない分類群であることが判明し,ギンメダイ類・サケスズキ類・タラ類・マトウダイ類の計4つのグループからなる分類群として再定義する必要があることを示した.また,キンメダイ類とカンムリキンメダイ類は双方ともに側系統群であることが明らかになった.さらに,真骨類の最上位に位置する"スズキ類"には,かつて原始的な上位真骨類と考えられていたアシロ類とアンコウ類を加えて,再定義する必要があることが明らかになった. 以上の結果はすでにMiya et al.(2001,2003)に発表され(下記参照),魚類高次系統学にこれまでにない大きなインパクトを与えた.
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