研究概要 |
本研究は,東南アジアを中心とした地域におけるコケ植物タイ類スジゴケ科Aneuraceaeにおいて,油体の型や分布から葉状体の組織機能分化を探り,その系統分類を明らかにした. 1.胞子発芽初期 葉状体の発達過程における油体の型や分布においては,初期から油体が一様に分布する種は,成体においても油体を全ての細胞に含むが,成体において油体細胞が偏在する葉状体では,組織分化後にその傾向が現れた. 2.油体の分布から葉状体の組織分化 AneuraとLobairricardiaにおいては,油体はほぼ一様に分布しており,油体からは組織分化は認められなかった.Riccardiaのおいては,油体の分布型が(1)油体が一様に分布する.(2)全体的に少なく,欠くか散在する(subg.Phycaneura).(3)腹面表皮細胞と縁細胞に油体を欠く(subg.Hyaloneura).(4)内部細胞だけに存在する(subg.Riccardia).(5)内部細胞と翼細胞の一部に存在する(subg.Riccardia)型に分けられ,葉状体の組織機能分化と相関することが認められた. 3.基準標本の再検討 同地域から原記載された種の基準標本を再検討した結果.39の学名を後続異名であると指摘した. 4.Vandiemenia 今回,初めて油体の有無と葉状体の分化が研究された.油体は存在せず,また,葉状体の構造は本科とは異なりMetzgeriaceaeのものである. 5.系統分類 東南アジアにAneura5種,Lobatiriccardia2種,Riccardia45種を確認した.その内,Aneura1種,Lobatiriccardia1種,Riccadia4種及びタスマニア産Riccardia1種を新種とすることを提案する.これ以外にも約10種について検討中であり,今後の研究課題である.
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