斜方晶のβ-FeSi_2は環境に低負荷で、地球上に豊富に存在する元素からできている。β-FeSi_2は熱電変換素子、受発光素子、太陽電池として応用が期待されている。我々は、レーザアブレーション法でSi基板上にβ-FeSi_2薄膜を堆積させ、その諸特性の評価を行った。 (1)室温でβ-FeSi_2相はなく、400℃以上ではっきりとしたβ-FeSi_2からの回折ピークを確認した。 (2)レーザアブレーション法により作製したSi(111)基板上のβ-FeSi_2は(202)、(220)方向にのみ成長し、単結晶構造だということが分かった。 (3)作製したβ-FeSi_2の組成はFe:Si=30:70でありSiリッチな組成になった。 (4)Si基板内へFeは拡散し室温および500℃のときに拡散量が大きい。 (5)400℃で成膜したとき不純物分布が片側階段接合となることが示された。 (6)20時間以上の熱処理を行った時、β-FeSi_2の半値幅が約50%減少し、結晶性が改善され、βFeSi_2の組成比はストイキオメトリーに近づいた。そして、バンドギャップの増大も起きる。 (7)Feやよび格子欠陥が不純物準位を作り、発光のキラーセンターとして働いていると考えられる。 (8)900℃、40時間のアニーリングサンプルは0.807eVにPLピークが現れているのが分かる。我々が知りうる限りでは、レーザアブレーション法では初めてβ-FeSi_2薄膜からのPL発光を確認した。また、as-depositedサンプルは、Siの欠陥かターゲットに含まれる不純物、およびそれらの複合体からの発光によるピークが得られた。
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