研究概要 |
本研究は,自然界に存在する物体の分光反射率のデータベースを用い,物体の色の存在範囲を分光空間における高次元多面体で表現し,この結果をメタメリズム(条件等色)の解析やカラー画像の入力機器の設計等に応用するものである.具体的には,まずSOCSと呼ばれる分光反射率データベース中のサンプルを用いて主成分分析を行い,主成分ベクトルを求めた.次に数個(5個程度)の主成分ベクトルが張る部分空間において,色の存在範囲すなわち色域を多面体により表現し,多面体の頂点を与える分光反射率や最外郭を与える超平面パッチのリストを求めた.これにより,任意の光源下での物体の色域を容易に求めることが可能となった.また,人間の視覚系や一般的な3バンドカラー入力装置において,同一の応答を示す分光反射率の集合(メタマー集合)を実際に存在しうる範囲に特定できるようになった.より具体的には,1.ある照明下で同じ色に知覚される物体の集合が,異なる照明下でどの程度異なって知覚されるか,2.同一照明下で,ある観察者にとって同じ色に知覚される物体の集合が,異なる色知覚特性をもった観察者にとってはどの程度異なって知覚されるか,3.3バンドカメラでの撮影の際,同一のカメラ出力を与える分光反射率の範囲はどのようなものか,などについて,明確な予測が可能となった.特に(1)については,照明の変化によってCIELAB空間での色差として最大30程度の色の違いが生じる可能性があることがわかった.
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