研究概要 |
エジソンの発明によるロウ管蓄音機は,世界最初の録音・再生装置であり,現存する録音媒体であるロウ管には,当時の音声,音楽などが記録されており,貴重な遺産であるが,ロウという脆い材料でできているロウ管を当時の蓄音機を用いて再生することは,そのまま音溝の破壊につながり,望ましくない.これを非接触・非破壊で再生するために,従来,レーザを用いたレーザビーム反射法が用いられてきた.しかし,レーザの持つ高いコヒーレンスは再生においてスペックルノイズによる再生音の劣化という現象をもたらし,針接触式再生に比べ,低音質が問題であった。 本研究では,レーザビーム反射法の持つ非接触・非破壊特性を生かし,コヒーレンスを低下させることにより,光学的音声再生における音質向上を目指した.また,同時に,これまでは光学暗室環境で行われていた再生を通常の部屋で行えるよう,可搬型の装置の完成を目指した. 低コヒーレンス光源の実現は1)LEDの使用,2)LDの高周波変調による低コヒーレンス化を行った.1)については,再生音声の高品質化が実現できたが,光量が小さいために,光学暗室環境が必要であり,可搬型への適用は不可能である.2)については,LDの駆動電流を音声周波数以上の高い周波数で変調することにより,時間コヒーレンスを低下させ,再生音声品質を向上させることができた.可搬型装置は軽量ステージの採用,ダイレクトドライブモータの採用などにより,完成した.
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