研究概要 |
「X線ポリゴンミラー」は光学のものに比べて,非常にコンパクトなものである。実際に作ったものは直径1mm,高さ10mm程度のシリコン円柱と言った方が実物に相応しい。そのようなものをより扱いやすいように,結晶の円柱部分を加工するときに10mm立方程度の結晶台座を残して,全体的に高さ30mm,重さ数グラムの精密な光学部品が出来たのである。「X線ポリゴンミラー」は軸が結晶110軸方向と一致するように加工され,0.06968nmのX線波長に対して,340個の基準面を持っている。 X線の反射面の表面が円柱の面であるために,X線に対する屈折率の影響が心配されるが,結晶が回転テープルに対して,サブミリラジアン程度に正確な幾何学条件が満たされるとき,X線反射のピーク値が平面表面の反射と1秒角以下の精度で一致することが実験的に検証した。 加工した「X線ポリゴンミラー」を使い,較正するための調整手順を決め,340個の反射面のX線反射を捉え,回転テーブルに備え付けた角度エンコーダーと照合して,角度エンコーダー付きの精密回転テーブルの角度精度を評価した。これによって,回転テーブルの全周にわたり,340個較正点を得ることが出来,その正確度が1秒角以下に較正出来た。 較正に利用した0.06968nm、波長X線は,連続スペクトルを有する放射光からを切り出した。同じくシリコン結晶から,X線を4回反射する一体型分光器(511,-5-1-1,-3-3-3,333)を作り,出射ビームの角度発散は0.5秒角,分解能Δλ/λは5×10^<-6>の性能を有するビームが得られた。結晶に対して温度制御を施せば,放射光光源もX線管球の特性X線と同じように,いつも同じ波長が安定かつ良質に提供出来ることがこの研究を通して実証した。
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