研究概要 |
東証個別株式の終値の時系列から推定したマーケット・インパクトの大きさを売買代金に回帰すると回帰式が成立する.一方,本発表の進展と時期を同じくして公開販売されたティック・データによると,その推定されたマーケット・インパクトは,単なるスプレッド以上の別の成分を含んでおり,これは,終値の取引に現れる特殊なマーケット・マイクロストラクチャに起因すると考えられる. 大証での日経225オプション価格のボラティリティの時系列に強い負の相関が観測された.この負の相関はスプレッドに起因すると考えるには大きすぎる.GARCHモデルを用いて,日経225オプションの仮想売買を行ったところ,極めて大きな収益を上げうることが判明した.この結果は,2つの意味で重要である. 1.GARCHモデルによりオプション価格を推定すると,通常のヒストリカル・ボラティリティから推定したオプション価格よりも市場価格のよい近似を与えることが知られている.しかし,香港市場ではこのフィットがかなりよいのに対し,大証ではこのフィットがあまりよくないことも分かっている.本研究の結果は,この原因が大証の価格付けのアノマリーに起因するものである可能性を示している. 2.もしそうなら,従来困難とされていた株価時系列ヒストリカル・ボラティリティからオプション価格を推定する可能性が示唆される. 以上の派生研究として「小選挙区制が2大政党制を導く」というDuvergerの法則を説明する空間的モデルの定式化を行うことができた.このモデル化は,長年の未解決問題であり,本体の研究と同様以上の重要な意味を持つものである.
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