研究概要 |
従来の研究から,ミクロな支配法則に基づいてエネルギー等の保存則が成立すればべき関数で表されるマクロな物理量が現れることが明らかにされてきた.しかし,散逸系はもちろん社会現象のように明確な保存則が存在しない場合にも,情報論的立場から自己組織化臨界現象の説明は可能である.本研究の目的は,統一的な手法の確立を目指してくりこみ群手法,フラクタル手法等の利用して,なぜミクロな法則が異なるにもかかわらず,マクロな状態で自己相似現象が現れるのかその理由を明らかにすることである.特に,従来は静的な挙動が注目されていたが動的な特徴を含んだ形で拡張する.以上の目的のため,最終年度の平成15年度は地震モデル,都市成長モデル,脳波研究のためのニューラルネットワークモデルなど具体的な対象を取り上げ,自己相似現象の研究に取り組み,研究のまとめを行った.理論的な観点からは,経済時系列データの示す特徴的なべきに依存するレヴィ分布に複雑系の研究では始めて導入する情報論的な立場から研究し,ガウス分布と異なる特異なべき分布の発生メカニズムを追求した.さらに,脳波の自己相似現象を解析するため,ニューラルネットワークモデルを導入し,くりこみ群手法およびフラクタル手法により自己相似解を求め,自己相似現象の理論研究を行った.次に数値実験的な立場からは,個別現象として取り上げた地震研究のためのセルラオートマタモデル,脳波研究のためのニューラルネットウークモデルなどに関して研究した.最後に研究の締めくくりとして,研究成果を国際論文ならびに国際会議で発表した.
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