研究概要 |
不規則雑音に埋れた信号の検出問題は,従来の通信分野,計測・制御分野はもとより,生体信号や地殻の亀裂信号の検出など自然科学分野などにも応用される技術である.本研究では,不規則雑音をうけて計測されるセンサー信号の検出と受信されるべき信号のパラメータの推定問題として信号の形状は既知であり,その遅れ時間,伸縮パラメータは未知であるとして,近年信号処理分野で注目されている時間-周波数解析を前処理として用いた.時間-周波数解析では,ウイグナー分布をはじめ多種多様な手法が提案されており,いずれの手法でも本研究に用いることが可能である.ウィグナー分布は検出すべき信号の相関をフーリエ変換することによって得られるが,本研究ではフーリエ変換の代わりにウェーブレット変換を用いた信号検出器について開発を行い,この方法が有効であることを確認した.さらに擬似ウィグナー分布の使用の可能性をも視野において信号検出器の開発を進めた.本手法の有効性を確認するためにいくつかのシミュレーションを行なった.信号として1周期正弦波,ガウス包絡線を持つ正弦波,周波数変調信号(チャープ信号),矩形波を用いたが,いずれの信号に対しても本手法の有効性が示せた.さらにウィグナー分布による解析ではクロス干渉項が生じる2連信号についてもシミュレーションを行い,本手法にはそのクロス項の影響が無いことを示した.本手法は,前処理として観測データを時間-周波数分布関数に変換するため,従来の相関法よりも誤差が少なくSN比$一10$[dB]といった高い雑音レベルに対してもタフな推定手法であることが確認できた.さらに提案した手法を超音波センサーによる距離計測に応用し,検証実験を行った.実データにおいても本手法が有効であることを確認した.また開発した手法のさらなる応用として雑音に埋もれたFM信号の瞬時周波数の推定問題に用い高雑音における推定精度は世界的に見てもトップクラスであることが示せた.
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