研究概要 |
本研究において,高エネルギー放射光の大きなX線侵入深さを用い遮熱コーティングの残留応力解析方法の確立を行った.対象とした材料は,Ni基耐熱超合金の基材にNiCoCrAlYボンドコートをプラズマ溶射し,その上にトップコートとして8mol%イットリア安定化したジルコニアを大気プラズマ溶射して,成膜された遮熱コーティングである.まず,波長72keVの高エネルギー放射光の強い透過力を利用し,トップコートを介して非破壊的にボンドコートの内部応力を測定した.SPring-8のBL02B1に高温加熱炉を試作して,室温から1373Kでのボンドコートの内部応力の変化をその場測定した.ボンドコートの内部応力は,1073K以上では軟化により消失し,1073Kと室温の範囲でトップコートとの熱残留応力がボンドコートに発生することがわかった.次に,トップコートの表面からボンドコートとの界面に至る残留応力分布をラボX線および高エネルギーX線の両方法で測定した.高エネルギーX線応力は平面応力成分と面外応力(はく離応力)を含み,ラボX線は低エネルギーのためにX線侵入深さが浅く平面応力のみを測定できる.両応力の差異から,はく離応力を解析するハイブリッド法を提案した.本方法により,非破壊的にはく離応力を評価でき,トップ界面の粗さがはく離応力を発生させていることがわかった.さらに,遮熱コーティングに1373Kの大気中にて500時間,1000時間および2000時間の高温酸化損傷を与えた.その界面には高温酸化層が生成し,アルミナ酸化層と混合酸化層の各成分の成長挙動およびはく離応力,平面応力を評価し,酸化物の生成がはく離応力を発生することを明らかにした. 以上研究の結論として,トップコーティングとボンドコートとの界面の粗さは,アンカー効果によりトップコーティングの密着性を向上させるが,はく離応力および高温酸化物の生成にも影響するので最適な設計を検討しなければならない.
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