研究概要 |
境界要素法の最大の長所は,線形問題では境界表面を要素分割するだけで高精度解析ができるということである.しかしながら,線形問題であっても,材料特性が場所ごとに変わる非均質場の境界値問題や初期条件がゼロではない初期値-境界値問題の解析では,必然的に領域積分を行う必要がある.また,基本解が求められない非線形問題の解析では未知関数を含む領域積分が現れ,これを評価して反復計算により収束解を求めなければならない.さらに境界要素法の解析では,微分方程式の厳密な基本解が求まっても取扱いが煩雑になり数値解析に支障をきたすという場合がかなりある.そのような場合は,微分方程式の主要項についての「近似」基本解を用いて積分方程式の定式化を行うことがある.このときも領域積分が現れ,この積分項には領域内の未知関数が含まれているので,これを効率的に処理する必要が生じる. 上述の領域積分に対する評価法の改善が,境界要素法の適用範囲を拡げるうえで不可欠である.このために,これまで領域内部を要素分割する方法(境界領域要素法やグリーン要素法),二重相反や多重相反を用いる方法等が提案されている.領域内部を要素分割すればロバストな解析法とはなるが境界要素法の利点が半減してしまう.また,多重相反を用いる方法は解析的な手続きが多いうえに適用範囲が狭くて実用的ではない.このうち二重相反を用いる方法は,近似的ではあるが領域積分のメッシュレス評価には極めて有望な手法である.本研究は二重相反法の考えを発展させ,領域積分のメッシュレス評価を精度良くかつ効率的に行う新しい境界要素法を開発することを目的とする.すなわち,領域内部に一連の選点を取りこれと境界要素分割の節点とで領域積分の評価を効率的に行う方法を提案し,その定式化に基づく境界要素法を開発して線形及び非線形問題を含む具体的問題に適用する.昨年度に引き続き本年度は,二重相反法に関する応用数学分野での研究情報の収集と分析するとともに,利用可能な近似関数から適切な関数を選択して具体的な問題についての定式化を行い,対応する解析プログラムを開発した.今年度は最終年度なので非線形の時間依存問題の領域積分を二重相反法により境界積分に変換する解析法の開発に重点をおいて研究した.そして,その妥当性を2次元場及び3次元場の幾つかの例題の数値解析を通じて確認した.
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