研究概要 |
893Kおよび常温において遮熱コーティングを施したSUS304につき疲労試験を行った.各溶射処理が基材の寿命に及ぼす影響を詳細に検討するため,未処理の試験片およびブラスト処理のみ施した試験片,ZrO_2-8Y_2O_3被覆およびAl_2O_3被覆,大気溶射ボンド層および減圧溶射ボンド層,ボンド層の拡散熱処理の有無,それぞれの疲労試験を行い,これらの疲労強度,破壊過程を比較・検討し,疲労破壊機構の検討を行った. その結果,セラミックス層のき裂は破断寿命に大きな影響を及ぼさず,破断寿命にはボンド層のき裂が支配的であることが分かった.ボンド層大気溶射材ではボンド層に疲労き裂が発生し易いため,ボンド層強度がより小さく基材界面がはく離し易いアルミナ溶射材の方がジルコニア溶射材より長破断寿命であった.これはボンド層にき裂が発生し,はく離が発生せずそのまま基材に進展する場合と,ボンド層にき裂発生後,はく離によってき裂が停留する場合の破壊過程の相違が原因であった.ボンド層減圧溶射材ではボンド層に疲労き裂が発生し難いため,基材界面がはく離し難く,長破断寿命となった.ボンド層減圧溶射材で破断寿命が向上するのは,ボンド層が基材のき裂発生を抑制したためであった.ボンド層大気溶射材よりボンド層減圧溶射材の方が長破断寿命であったので,寿命を向上させるには強固なボンド層を長はく離寿命で基材に被覆することが有効であることが分かった.ボンド層のはく離寿命を向上させるには,ボンド層の密着強度と強度を向上させることが有効であることが分かった.また,セラミックス層の強度は低下させることが有効と考えられた.疲労破断寿命向上にはボンド層の引張残留応力軽減が重要であることが分かった.
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