研究概要 |
熱源を緩やかな曲線に沿って移動させれば,き裂が熱源移動軌跡に沿って進展し,直線的な熱応力割断の場合と同じように曲線割断が可能であることを実験およびシミュレーションから明らかにした. ガラス矩形板に炭酸ガスレーザを照射し,縁き裂を進廃させ,ガラス板中央付近で熱源進展経路を急に変更すると,き裂は熱源経路を正確にはたどらず熱源経路に内接する曲線を描きながら熱源に追従するが,加熱量や熱源速度に依存して進展の加速や遅延が発生した.このようなき裂進展挙動のシミュレーションを行い,き裂進展のタイミングや経路が実験とよく一致することを確かめた.その際き裂屈折条件として,進展量を仮定しき裂進展複のモードII特異性が消失するような角度に屈折するという条件を利用した.き裂先端のT応力の影響が考慮でき,推定されるき裂進展経路は滑らかになった.しかし,この方法では進展方向の決定に繰り返し計算が必要になる. ガラス円板の外周から半径方向に予き裂を導入し,縁から一定距離の円周上に炭酸ガスレーザを照射し移動させれば,き裂はその先端の角度位置に依存せず,熱源後方ほぼ一定の距離を保ちながら全周にわたり熱源を追従し,結果的に直径を減じた円板に加工することができた.このことはき裂長さに依存せず,同じような応力特異性が生じていることになるが,2次元非定常熱応力場の解析からこのことを確認した.き裂面の倒れ現象も見られ,3次元非定常熱弾性有限要素解析を通して,板厚内での熱応力分布を検討した.モードIIの応力特異性のためき裂進展経路が自由縁側にずれると,その箇所では主応力が板の面に対して傾いて作用しているためき裂面も傾くと予想される. 温度変化を圧力中心に置換え,き裂先端位置によらずほぼ等しい応力特異性を得た.圧力中心による応力特異性評価を前もって準備しておけば,実験条件に対する準定常温度場を用いて熱応力特異性が簡便に算定できる.
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