研究概要 |
レーザ光もしくは可視光を母材が通し,表面下に存在する繊維が観察可能であるならば,汎用性の高い共焦点レーザ走査形顕微鏡や光学顕微鏡を用いて内部構造を知ることがより現実的な方法といえる.ところが,表面に近い繊維については問題ないのだが,表面から離れるにつれて,繊維にそれより手前にある繊維が重なる確率が高くなる。このことが共焦点レーザ走査形顕微鏡,光学顕微鏡を用いた短繊維強化複合材内部構造解析に大きな壁として立ちはだかる. 当該研究においては,この問題を解決するための基礎的な研究を行った.まず繊維と複合材の相対的な位置を分類し,各分類についての表面への投影長さ分布を求めた.次に,それを利用して表面下の繊維の可視部分の長さ分布を計算した. この研究を受けて,次に表面下の繊維の完全投影長さおよび不完全投影長さ分布を理論的に誘導した.誘導した理論式を用い,短繊維強化複合材中の繊維長さの変化に対する完全投影長さおよび不完全投影長さの変化を求め,本理論による繊維長さ分布推定の可能性について検討した.さらに,完全投影長さおよび不完全投影長さに与える様々な因子の影響について検討した. 先の研究では,繊維の重なり部分の幅を求めるための式が,漸化式となっている.このため,計算精度がどうしても上がらない.繊維の重なった部分の幅の分布を多項式で表現することに挑戦した.繊維が表面に平行な面内でランダムに配向された短繊維強化複合材,いわゆる2次元短繊維強化複合材を表面から観察したときの繊維の重なり部分の幅を解析的な手法により誘導した. 当該研究で得られた理論を現実の複合材料に適用することも試みた.表面下の繊維像をある程度は捕らえられたが,3次元的な繊維配置取得までは至らなかった.今後,早急に繊維配置取得までは至らなかった原因を究明して,当該研究で得られた成果を現実の複合材料に適用することを行いたいと考えている.
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