研究概要 |
マイクロマシニング,マイクロファブリケーション技術は,これまでMEMS(シリコン基盤へのリソグラフィー技術)をベースに急速に発展してきた.MEMSの加工原理から対象がSi材に限定され,また創成できる形状が2Dであることから,異なる特性を持つ材料に対応でき,しかも3次元形状創成が可能な機械加工によるマイクロファブリケーションに関する研究が日本,アメリカとヨーロッパで盛んに行われている. このような非シリコンのマイクロマシニングでは,例えば金属などの,異なる性質を持った様々な材料を加工対象とするため,各々の材料に適した加工法が必要となる.また,複数の工程(例えば,粗,中,仕上げ加工)を要するアプリケーションは,これまでは異なる工作機械を使って行ってきたが,繰返しやチャッキングに伴う誤差がマイクロの寸法領域において無視できなくなり,すべてのプロセスが1台の加工機械で完結するone-stopの性能が求められている. 今回開発したマイクロ多機能加工機は,粗加工から仕上げ加工までを1台の機械で行うため,従来の工作機械のように複数台の機械を必要とせず,エネルギー消費やコスト,スペースの点で優れている.本加工機の構造は,4自由度を持つデスクトップサイズのマシニングセンタであり,0.1μmの高精度の位置決め機構を持っている.さらに,種々の加工ユニットを換装することで,ミーリング・ドリリング・旋削・研削等の機械加工から,放電/電解加工等の電気エネルギー加工,レーザ発振ユニットの使用によるレーザビーム加工・レーザトリートメント加工,及びこれらの加工を組み合わせた複合加工を行うことが可能である. 本報告では,多機能・複合型の加工が可能なマイクロマシニングシステムの設計・開発について述べ,開発したシステムにおけるCAD/CAM/CAE等のITを援用した加工事例を紹介する.さらに,マシニングシステムのアプリケーションとして,マイクロ部品の典型例であるマイクロ球面/非球面レンズ金型の製作を,マイクロEDM(electrical discharge machining)加工により行った.実験では,開発複合加工機能を使ってマイクロ切削により電極先端を球面/非球面に創製し,マイクロEDMにより超硬金型に形状転写した.また,サイズの減少に伴って電極消耗が大きくなるが,本システムの特長である多機能を使うことで,加工物と電極それぞれを加工原点から動かさずに,周期的に電極形状を機上で再生することで解決し,形状を正しく転写させた.
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