研究概要 |
1回だけの絞りで歯車とする従来法では,充てんした歯車が得られる断面減少率が約25%までである.これに対して二段充てん法では,実験的に調べうる最低の断面減少率は,中実円筒試料の場合でその値は20%となる.この場合でも完全に充てんした歯車が成形できる.さらに低い断面減少率でも充てんする事が予想された.そこで,試料内径よりも小さい径のマンドレルを用いる成形およびマンドレルを用いない成形を試みた.これにより,断面減少率7%,パンチ面圧では460MPaまで良好な成形品が得られる事が明らかにされた. このように二段充てん法が歯付き部品の成形法として有利な事がわかったので,その原因を調べるために有限要素法により材料流動を調べた.その結果,二段充てん法では円周方向の材料流動が半径方向内向き(歯元方向)の流動を抑えており,これが良好な成形をもたらす原因である事が定量的に示された.そこでこの効果をより発揮させるためのダイス形状について,一段目の歯厚,ダイス半角を変化させた有限要素解析を行った.成形性の点からは,一段目の歯厚を厚くすること,また面圧の点からは,ダイス半角を小さくすることが有効である事が明らかにされた.実際にこのダイスを用いた時の成形の様子を有限要素法でシミュレートした結果,充てんした歯車が低い面圧で成形されることがわかった.このように有限用法による解析が極めて有効であることが明らかにされた. このように,二段充てん法に対する有限要素解析は,ほぼ実験をシミュレートしている事が明らかにされ,最適ダイス形状の決定も行える事になった.有限要素法を数多く行えば,最適形状の決定が一層簡単になるものと思われるが詳細については今後の研究に待ちたい.
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