研究概要 |
近年のダイナミックな需要変動に対応し,厳しい企業間競争に生き残るために,製造業は市場の要求に迅速に応えることのできる生産体制を整備することが不可欠となっている.このため,製造品種の多様性ばかりでなく,その量的変動にも効率的に追従できるアジリティに富む変種変量生産システムを構築するとともに,状況に順応しながら効率的運用を可能とする方法を組み込むことが重要である. 本研究では,アジャイル生産に対応可能なシステムとして,工具と加工プログラムの変更により多様な加工プロセスを実行可能なマシニングセンター(MC)を多数配置した機械加工システムを考える.MC群の初期配置としては矩形配置レイアウトを考えるが,さらに設備レイアウトを自己組織的に形成し,自律的に運用する方法について研究し,その有用性を検証することを目的とした.ここでは各MCの加工品種,加工プロセスは事前に固定的に設定するのではなく,システムの運用中にダイナミックに生ずる需要変動に対応して適当な条件判断を自律的に行う事により,特定の品種・プロセスの加工に特化(専用化)したり,加工対象の制限を緩和(汎用化)する自律的な運用法を適用することにより,加工品種群の変更,各品種の生産量の変化に自律的に対応する方法について研究する. 計画された生産能力に見合う台数のMCを矩形状に配置したレイアウトをまず検討した.自律的な運用を実現するために加工MCの選択にオークションに基づく運用法を適用することにより,オークションに用いる競り値の種類を適切に設定するとワークの加工工程に沿った流れを創出したり,特定の品種に特化する傾向が認められることを明らかにした.さらに,各MCが特定の加工品種加工プロセスの加工のみに特化した工具セットのみを持つようにする専用化アルゴリズムと,MCの稼働率が低下したり,中間のパレットチェンジャーにおける在庫が増えた場合に適当な工具セットをMCに供給し,加工対象を拡大する汎用化アルゴリズムを提案した.それらを適用することにより,準備すべき工具セット数を大幅に削減するとともに,加工工程に即したワークの流れを自律的に創出できることを示した.これらの研究成果をさらに発展させることを考え,初期配置するMC台数を必要台数よりも多く配置し,工具セットの削減ばかりでなく,稼働率の低いMCも削減する方法について研究した.提案した方法により,所期の総生産量とプロダクトミックスに応じたMCレイアウトが得られることを示し,その有用性を明らかにした.
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