研究概要 |
(1)本研究では,予測困難な変化に対して機敏に対応する能力(Agility)を有するアジャイル生産の実施形態を具体的な物理モデルとして実現し,システム形態,設備構成,運用方策などについて具体的に検討するためのプロトタイプを構築した.構築したプロトタイプは,生産系と搬送系から構成されている. (2)生産系において各設備が自律的に意思決定を行いながら,なおかつ高性能なスケジューリングを行うための方法を提案した.提案手法では,さまざまな情報をネットワークを介して収集し,それを基に次に処理するジョブの選択を逐次行っていく.このために階層型ニューラルネットワークを学習する方法を提案した. (3)生産系において断続的に発生する搬送要求をリアルタイムで処理するためのAGV運行管理方策を提案した.提案手法では,搬送系ホストコンピュータにおいてAGVの効率的な搬送経路を高速に求めることができ,障害物やAGVの一時的な停止による突発事象に対しても,AGVが自律的に行動したり,ホストコンピュータに再計画を依頼したりして柔軟に対処できる. (4)提案した生産スケジューリング法とAGVの運行管理法の有効性をプロトタイプによって確認した.すなわち,生産対象の部品情報ファイルを各設備を摸擬したコンピュータ間で自動的に転送することによって生産系における評価シミュレーションを行うことができた.また,この時発生するジョブの搬送要求を搬送系コンピュータに送り,実際にAGVをレイアウト上で走行させる実験を行った.実験の結果,AGVは互いに衝突せず効率的な経路を走行した.各搬送要求が達成されると,それが搬送先の設備に送られ,それを起点にして更に生産実験が進行していくことを確認した.また,障害物などによってAGVの走行に遅れが発生した場合でも,自律的に障害物を回避し,また必要に応じて搬送系ホストコンピュータでの再経路探索を行うことで,柔軟に搬送を行うことができることを実際に確認した.
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