研究概要 |
機械加工の精度と能率を向上するために,高速切削技術の開発が強く求められている.これを達成するためには,主軸高速回転に対応した高性能な工具把持メカニズムの開発が不可欠である.高速回転時には大きな遠心力が作用するため,ツールホルダと主軸との結合状態が影響を受けて,把持精度および把持剛性が劣化する.この課題を解決するために,いくつかの2面拘束形ツールインタフェースが開発され,その結果,対応可能な主軸回転数は高まった.しかしながらこの種のインターフェースでも対応できる主軸回転数には限界があり,その限界が今後の主軸高速化の避けがたい阻害要因のひとつとなっている.本研究では,この課題を本質的に解決するために,主軸回転に伴う遠心力を工具把持力の増力源として生かす新たな工具把持メカニズムを提案している.最初に,本メカニズムの基本的要求仕様を定めた.それに基づいて基本的モデルを設計し,その工具把持特性を有限要素法解析により評価した.さらに,その設計に基づいて,テストモデルを実際に製作し,工具把持特性を測定した.その結果,部品の製作精度が過剰に厳しいため,十分な工具把持トルクを得ることが難しいことがわかった.そこで,構造を大幅に簡素化し,構成部品の寸法誤差の影響を受けないように設計を改良した.さらに,工具の位置決めのためのツールストッパや遠心補正くさびの案内機構を組み込むことにより,チャッキング動作がより適切になるように改善した.最後に,その改良モデルの工具把持特性を理論解析および有限要素法を用いて評価した.その結果,以下のことが確認できた:引込み力に対して工具把持力を10倍以上に増力できる.従来のツールチャックと同程度の工具把持力を実現できる.主軸回転数10,000min-1において,遠心力の作用により工具把持力を18%高めることができる.以上より,開発した把持メカニズムは,超高速主軸に適用可能と言える.
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