研究概要 |
本研究課題は,高度な作業スキルを要する超精密部品の組立技術に着目し言葉では表現できない「経験や勘」に相当する作業の定量化,および定量化されたデータに基づく作業のモデル構築作業を行うことを目的として2年計画で実施された. 初年度は,申請に先駆けて実施した予備実験を参考に,計測システムの開発および基礎的な計測実験を行った.予備実験で用いた市販の6軸力センサのモーメントに関する感度が低過ぎたため,まず測定感度の高いモーメント計測用センサを開発した.その結果,直線性,方向分離性,ヒステリシス共に性能の高い2軸モーメントセンサを実現した.さらに軸と穴の効果的な位置合わせ方法の導出や,力に関する情報の解析精度の向上を目的として,挿入される軸の作業中の姿勢(傾き)変化も同時に測定した.2度にわたる計測システムの改良を行いそれぞれ計測実験を実施した.その結果,力・モーメント・姿勢ともにほぼ所望のデータを計測できるシステムを構築することができた.また2度にわたる計測実験を通じて,熟練者と非熟練者の間には物理情報的な観点から作業パターンに明らかな差異があることを確認できた. 2年目においては,前年度に構築した計測システムを用いて実験データを収集するとともに,そのデータ解析を中心に取り組んだ.多少の計測システムの改良を加えた後,熟練者・非熟練者による多数回の作業計測実験を行ったところ,次のようなことが明らかになった.熟練者と非熟練者の大きな違いは,モーメント負荷の与え方であり,素人の場合,無理やりモーメントを与えながら挿入してしまうためミラー側(ポリゴンミラー+挿入ジグ)の自重以上の負荷をかけてしまうが,熟練者はそのようなことが無く毎回同じように組立を繰り返している.挿入開始時の心合わせ部分では軸と軸受の双方に設けられた微小面取り部分を利用した調心動作を行っていると考えられる.力とモーメントの計測結果を比較するとZ軸方向の負荷が抜けたときにX, Y軸周りのモーメントが少し大きな値になっていることから,挿入の過程ではジグの傾いている方向がわからなくても上向きの力を作用させることで自動的に姿勢を補正する方向にモーメントを作用させ挿入を行っていると考えられる.
|