研究概要 |
本研究は,超精密工作機械用の新しい小型高性能スピンドルを開発することを目的にしている.このため,本研究では,水のエネルギーで駆動される新しいスピンドルを考案した.このスピンドルは,水の静圧軸受で支持され,さらに流体のエネルギーによってスピンドルを回転させるトルク発生用の流路がスピンドルに一体的に組み込まれる構造を有する. 本研究では,まず,考案したスピンドルに組み込むモータ機能について検討を行った.すなわち,モータの理論式を導出し,この理論式を用いた計算結果と試作したモータの性能がよく一致することを確認した.この結果に基づいて,導出した理論式を利用したモータの設計アルゴリズムを確立した.この設計アルゴリズムは,モータ効率が最高になる最適パラメータを決定することができる. モータに関する研究に引き続いて,スピンドルの特性を表す理論式を導出した.さらにスピンドル設計用のソフトウエアを開発した.このソフトウエアを用いることによって,指定した仕様を満たし,かつスピンドルの全効率を最高にする最適パラメータが算出できるようになった.さらに,本研究では実際にスピンドルの設計及び製作を行った.開発したスピンドルの基本仕様を以下に示す. 定格出力:50W 定格回転数:10000rpm ジャーナル軸受の剛性:50N/μm スラスト軸受の剛性:50Nμm 開発したスピンドルの性能を評価するための実験を行い,スピンドルの回転数特性,供給する水の温度変化,軸受剛性の測定を行った.その結果,スピンドルの回転数特性については,理論計算結果とほぼ一致し,スピンドルモータ部は設計通りの性能を有することを明らかにした.一方,スピンドルに組み込んだ静圧軸受の支持剛性は,設計値よりも低いことがわかったが,これについては,軸受部の絞りを変更することにより解決できる.今後は,本研究で得られた成果を発展させ,超精密小型工作機械の開発を行う予定にしている.
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