研究概要 |
学習・適応戦略を持つ生産システムエージェントをより現実的にするには,高能力のエージェントに加えてむしろ低能力の自律エージェントが必要とされる.低能力のエージェントとは,単に周囲のエージェントとのみ単純な情報交換を行い,局所的な組織化と全体の組織化及び最適化を実現し,システムの合目的性を達するエージェントである.このようなエージェントを実現するためにT.コホネンによる自己組織化マップ(SOM)の方法を採用した. SOMは,人工ニューラルネットワークの一つとして知られる信号層と競合層からなり,競合層は単純な結合トポロジー(ネットワーク)によって制約されるANNである.信号層から参照信号が与えられると,参照信号に最も近いニューロンが活性化しそれにつられてその周辺のニューロンも活性化し,クラスタリングを行う能力を備えている. 参照信号を環境からの入力,エージェントを競合層のニューロンとみなせば,入力環境の近くのエージェントは自己組織化原理により周辺の自己組織化を行う.SOMではこの自己組織化を信号ベクトルとニューロンのシナップスベクトルで実施する.このような方法を用いて,仮想工場内のAGVの経路獲得問題及びn台のAGVの搬送経路獲得問題に適用を行った. 上記の数値計算実験を行ったところ,獲得されたAGVの経路は両問題において交差する望ましくない経路を作成することが明らかとなった.これを解決するためにSOMにB-spline補間で用いられるマルチノットの概念を導入し,仮想工場内のAGVの経路獲得問題では出発点と終着点をマルチノットのニューロンで固定し,n台のAGVの搬送経路獲得問題では出発点をマルチノットのニューロンで固定した数値計算実験を実施したところ前者の問題に対しては理想的な経路を獲得できることが検証できた.しかしながら,後者に対してはやはり,交差する経路が作成された.これを改善するために,後者の問題に対しては,初期にマルチノットニューロンを出発点に配置し,その後はニューロンを移動可能なように解放した方法を開発した.その結果,良好な経路が獲得されることが検証された.これらの成果は,精密工学会,機械学会ロボットメカトロニクス部門大会等で公表している.
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