研究概要 |
本研究では変形を伴う多孔質材料が各種しゅう動面に適用された場合の潤滑特性を明らかにするための基礎データを提供する目的から,円柱形多孔質ゴムブロックに回転(すべり)運動と正弦波スクイズ運動を同時に加えた時の,剛体平板(静止面)と多孔質体表面(しゅう動面)間に形成された流体膜の潤滑特性(液膜圧力,液膜反力,摩擦トルク)を理論的,実験的に解析した.数値解析では,液膜圧力を支配する方程式として,流体膜の慣性力を考慮に入れた運動方程式と連続の式を用い,また多孔質体内部の圧力支配方程式として,多孔質体内部の液体の遠心力とダルシー則を考慮に入れた運動方程式と連続の式を用いた.さらに多孔質体ブロックを軸対称粘弾性体モデル(バネとダシュポットからなる3要素線形モデル)で近似し,多孔質体表面に作用する液膜のせん断力と多孔質体内部の液体の圧力よる多孔質体の変形を求めた.これらの基礎方程式を連立して解くことにより,液膜圧力などの諸特性を算出した.また,実験では自動車用タイヤ(廃タイヤ)をチップ状に細断したものを圧縮成型し,円柱形多孔質ゴムブロックを製作した.多孔質ゴムブロックには電磁加振機によりスクイズ運動をまたモータにより回転運動を与え,静止した剛体円板との間に潤滑膜を形成した.そして,スクイズ凋波数,振幅,時間平均すきま,回転速度をパラメータにして,液膜圧力,液膜反力,摩擦トルクなどを測定した. 以下に得られた研究成果をまとめる. (1)多孔質体ブロックにスクイズ運動のみが加えられた場合,スクイズ凋波数および振幅が大きくなると,また時間平均すきまが小さくなると,液膜圧力ならびに液膜反力の時間変化に伴う変動のピークが大きくなる.これらの傾向はSolidゴム(非多孔質ゴム)の場合にも得られた.さらに,実験結果は数値計算結果と定性的,定量的によく一致した. (2)スクイズ周波数一定のもとで多孔質体ブロックに回転(すべり運動)が与えられた場合,液膜圧力および液膜圧力は全体的に負側へシフトする.しかし,スクイズ運動に伴う液膜圧力によって生ずる多孔質体表面(しゅう動面)の変形量が大きくなると,液膜圧力および液膜反力の正のピーク値の負側へのシフト量はあまり変化しないが,負のピークの負側へのシフト量は小さくなる.この傾向は,スクイズ運動による液膜圧力が大きくなる条件すなわちスクイズ周波数および振幅が大きく,時間平均すきまが小さい場合,また,液体の多孔質体内部への移動によって液膜圧力が低下しやすい多孔質体ゴムよりも液体の移動を伴わないSolidゴムの方がより顕著になる.これらの結果は,実験と計算で定性的に一致した. (3)しゅう動面の摩擦トルクは回転速度とともに増加する.スクイズ運動が加えられた場合,摩擦トルクはスクイズ周波数とともに変動する.
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