研究概要 |
ねじ締結の信頼性を確保するためには,実際の締付け作業条件を忠実に再現でき,その条件下で,ねじ面や座面における摩擦挙動と締付け力の関係を調べる必要があるが,現状の試験装置では,各特性値の測定精度に問題があるだけでなく,装置全体の剛性が高められないため,これらの問題を解消できる可能性がある新しい装置の開発が必要である. そこで,剛性が極めて高く,かつ精度及び直線性が測定レンジによらず一定であるという大きな利点をもつ水晶圧電式センサをロードセルに利用することを試み,理論的に,座面とねじ面での摩擦トルクを完全に分離できる構造をもつ測定系を考案した.次に,このような状態での使用を想定したとき,センサの特性がどのように変化するかを調べるため,軸力センサについて,プリロード及び接触面圧分布が測定感度に及ぼす影響を実験及び解析の両面から調べたところ,センサの感度は,局所的な圧力が作用すると公称値より大きくなる傾向があるが,直線性に関しては低下せず,所期の精度での測定が可能であることがわかった。 一方,トルク計測用に用いるせん断力センサについては,実際の状態での評価が不可欠なため,測定系のモデルを製作し,ひずみゲージを貼付し,校正を行った軸力/トルク測定用ボルトや,材料試験機を利用した準静的な精度検定を行った.その結果,水晶板の切り出し,及びセンサの取り付けの状態によって,軸力とトルクの測定値の間に干渉(クロストーク)が生じ,締付け過程とゆるめの過程でセンサの見掛けの感度が変化する事がわかったが,センサの配置及び構造を工夫することで,軸力の影響を線形化でき,計算による補正によって所期の精度を達成できる見通しが得られ,それに基づく装置の基本設計案を提示することができた.
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