研究概要 |
本研究の目的はレーザーフォーカス変位計とダイヤモンドアンビルセル高圧発生装置を組み合わせて,潤滑機械部品摩擦摩耗特性評価の基礎データである潤滑油高圧密度の加圧減圧過程,昇滑降温過程履歴を解明することである.2年間の研究実績を主要な実施計画に対し下記に示す. 1.圧力室形状のモデル化と油の高圧屈折率に関する仮定に基づき,メタノールなどで検定実験を行って,高圧体積評価法を確立した. 2.現状では準静的高圧体積データもないのでまずその測定を行った結果,立体環状分子構造のトラクション油(SN100,CVT油),ポリフェニルエーテル(5P4E)は鎖状分子構造のエステル油のDOS,メタノールより圧縮されにくい傾向であることがわかった. 3.数分程度の速い短時間加圧時間での体積はトラクション油SN100では2GPa程度で5%,4GPa,6GPaでは,10%近く準静的に加圧したときより縮みにくいことがわかり,固化圧力以上では非平衡に圧縮されせん断抵抗の発生で縮みにくくなるとの予想が実証された. 4.短時間加圧の状態から準等圧力下で160℃程度まで昇温し数時間保持して室温に戻すと,いずれの圧力でも体積が減少し準静的な体積に近づくことがわかった.ゆえに油の非平衡固化圧縮状態から温度上昇により焼なましのような効果があり平衡状態に近づくとの予想を実証できた. 5.短時間加圧実験をDOSについて行ったところ5GPaの圧力でも予想外に準静的な体積と一致し,この理由としてDOSでは準静的加圧と非平衡の度合いはあまりかわらない可能性が考えられる. 6.油種の分子構造,固化圧力などの相違により圧力温度履歴は異なる. 7.構築した体積粘性率を用いた高圧力下の速度依存粘弾性状態式は,実際計算するには非常に複雑な式となると予想されるが数式処理ソフトなどを使えば比較的簡単に計算できる. 8.計画以外に次の関連する研究成果を得た.高圧密度と関連した高圧粘度データをトラクション油について200℃,2GPaまで得た.油固化高圧力下の微少すべり域トラクション挙動に乾燥転がり摩擦理論である粘着理論を適用し曲線主要因を解明した.
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