研究概要 |
本研究では,DC小形スピンドルモータ(用途:CD-ROM,DVD等)の軸受機構である多孔質焼結含油軸受に,ラジアル方向,及びスラスト方向双方の各種動圧形状を形成することにより動圧流体潤滑理論の適応を試みている.具体的には,まず軸受のラジアル・スラスト受け面に,予め機械加工プロセスによる塑性流動を利用した空孔調整層を形成する.そして,この空孔調整を施したそれぞれの受け面に,各種動圧形状としてヘリングボーン:HB,及び非対称三円弧:TLT(ラジアル形状)と,ウェーブ:WAVE,及びポンプインPIN(スラスト形状)を形成し複合軸受とする.この各種組み合わせからなる複合軸受の浮上性,温度上昇値,摩擦トルク等の潤滑特性を実験的に測定し,従来軸受と比較することで,その向上度合いを検討している.結果的として,従来品であるスリーブ軸受:SLV(真円軸受)に対して,精度的に軸振れ約1/3以下,軸受推定寿命約2倍など大幅な特性改善を達成することが可能となった.さらに,CFD(Computational Fluid Dynamics)を利用したシミュレーションによる特性予測に関しても,多孔質体への浸透端数値モデル化の考案がなされ,負荷容量,摩擦トルク,軸受剛性等,各軸受特性についての検討が行われている. 以下,実験結果を基に検討を加えた複合軸受としての結論を記す. 1)浮上性試験においては,ラジアル動圧形状が支配的であり,これにスラスト動圧形状を付加することによる相乗効果で浮上性を改善できる.なお,最も安定した良好な浮上性はPIN-HBの組み合わせで得られた.(1000rpmよりほぼ完全浮上状態となる) 2)温度上昇値,摩擦トルクの測定では,ラジアル動圧形状が,TLT<SLV≦HBの順で両特性値とも低く,特にTLTの場合はスラスト動圧形状にかかわらず他の組み合わせの1/2程度に低減が可能である. 3)耐久性試験でも2)の傾向は同じであり,特に油消耗率に最も優れるPIN-TLTにおいては,省エネルギ化,軸受長寿命化に対して他の組み合わせの約2倍の実力が期待できる.
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