研究概要 |
低レイノルズ数領域(10^3<Re<10^4)におけるピッチング運動翼まわりの流れ場とそれに働く非定常流体力特性を明らかにすることを目的とし,染料を用いた可視化実験および非定常流体力測定実験を行った.その結果,以下のことが明らかになった. (1).ピッチング運動翼後流のフローパターンと非定常推進力特性 1.高無次元角速度のピッチング運動を翼に与えることにより,翼後流には推進力発生渦列が形成され,翼は推進力を発生することが可能である.無次元角速度が高いほど翼後流には推進力発生渦列が発生し易い.また,回転中心を翼前縁から1/4弦長とすることにより,1/2弦長時よりも低い無次元角速度で推進力発生渦列を形成することが可能である.さらには,ピッチング振幅を大きくすることにより,さらに低い無次元角速度で推進力発生渦列を形成することが可能である. 2.回転中心を1/4弦長とし,ピッチング振幅A=±6°,無次元角速度k=4.22の場合には,ピッチング一周期当たりのほとんどの領域において推進力が発生し,その最大値は約1.2となる.ピッチング運動翼後流に渦間の密な推進力発生渦列が形成され,大きな増速流が発生しているためである. 3.高無次元角速度のピッチング運動翼に働く非定常揚力は,1/2弦長の場合には,無次元角速度およびおよびピッチング振幅が高くなるにつれ,その最大値および最小値は定常揚力に比べ大きくなるが,ヒステリシスループの傾きは,定常揚力曲線と同様に迎え角に対して右上がりとなる.1/4弦長時には,非定常揚力の最大値および最小値は定常揚力に比べ,非常に大きくなり,さらには,そのヒステリシスループは迎え角に対して右下がりとなり,迎え角と非定常揚力との位相が逆になる. (2).ヒービング運動翼背面上の渦の挙動 4.ピッチング運動翼の場合と同様に,高無次元ヒービング速度V_h>0.126のヒービング運動翼前縁より発生する強い回転をもつ渦は,翼背面上に再付着し,翼背面上に再循環領域を形成する.また,ヒービング運動翼の場合,迎え角が常に一定であるため,再付着する渦の動的挙動は翼形状に依らず,ほぼ同じ挙動となる.
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