研究概要 |
本研究は,強いレーザ光を用いて,強い衝撃波と渦輪を生成し,それらの干渉現象やそれらと物体との相互作用によって生じる流れ場を,光学的可視化により観測し,圧縮性乱流現象の基本的な性質を明かにする目的で行われた.レーザアブレーションで衝撃波と渦輪を作るに先立って,まずレーザを集光してその近傍で起こるブレークダウンの様子を可視化し,放射された衝撃波やプラズマガスの状態を時間を追って観測した.またレーザアブレーションで放射される音を測定しその方向性等を調べた.衝撃波管によって生成した高速渦輪流れが小物体に接近したときに生じる物体周りの流れの様子も調べ,流れ場を作る物体形状の役割を明にした.以下に得られた知見を示す. (1)レーザビームを集光すると,その集光部を中心にレーザ照射方向に少し伸びた球状の強い衝撃波が外側に向って伝播する.球状衝撃波内部には,レーザビーム方向および後方へ進行する幾重にも重なった弱い衝撃波が生じ,これらは外側の球状衝撃波に追い付き吸収される. (2)レーザ集光部のプラズマ状態は,低密度の円盤状の層がレーザビーム軸方向に数層並び全体として球形に近い楕円形の構造を示している.層間は高密度で層の端からは小さな衝撃波が斜め後方に走っている.このプラズマ状態は長く続き,そこでは活発にエネルギーの放出や吸収が生じている.それは楕円形状の内側からガスが噴出したり,楕円形状部分が分裂して渦形状となって飛翔していることから分かる.この現象が起るときは強い衝撃波が生成され,また外側の球状衝撃波は大きく変動する. (3)高速渦輪流れが角を持つ小物体に衝突して行く過程で,物体側面には剥離泡が生じそれは渦輪に成長する.また物体前面の角と剥離渦を結ぶ面は剪断層が形成され小渦輪列が生じる.鈍頭物体の場合は剥離点からショックレットが形成された.これらの生成機構を明かにし,この相違には剥離泡が生じるときの先頭渦輪の位置が大きく関係することが分かった.
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