研究概要 |
本研究は,「物体表面に光の波長程度の微細構造を設けることで,機能的なふく射(光)性質をもつ表面を創成する」そのための基礎を確立することを目的としている.研究初年度にあたる平成13年度には,微細構造を有する表面の光性質を予測するための数値解析手法を開発した.この解析コードは,Maxwell方程式を有限要素法により解くもので,多様な微細構造をもつ表面を扱える汎用性の高いものである.この年度では,これを利用して2次元微細構造を表面にもつ構造体のふく射性質を解析した.この成果は,「モルフォ蝶鱗粉のふく射性質に関する数値解析」と題して「Thermal Science and Engineering」に公開されている. 研究最終年度にあたる平成14年度には,開発した数値解析コードを用いて,特定の光機能を有する表面の微細構造を予測した.当初,本研究ではこの予測された構造を実際に製作し,その表面の光機能を評価する予定であったが,現在の微細加工技術では予測された微細構造を製作するには至らなかった.そこで,本研究では鱗粉表面の微細構造により金属的に青く輝くといわれるモルフォ蝶を対象に,本数値解析による光機能予測手法の妥当性を検討した. この年度には,この検討に利用する2方向反射率計測装置を制作した.この装置は、本研究費により購入した,Arイオンレーザーとこれまでに研究者の保有してたHe-Neレーザーの二つの光源を備えており,可視光領域内の4波長で,表面の反射性質を計測できるものである.この装置により,解析結果と比較しえるモルフォ蝶翅表面の詳細な反射性質を明らかにすることができた.現在,この翅表面の光性質を数値解析的に予測するために,鱗粉表面の詳細な構造を調べている.
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