| 研究概要 |
ホルムアルデヒドはよく知られた低温度酸化過程の中間生成物質である.先に提案した天然ガス予混合圧縮自着火機関(では天然ガスの自着火性を改善するためにホルムアルデヒドを混合気に添加し,加えて,その添加量で着火時期を制御する.冷炎生成を伴わないメタンに対してホルムアルデヒド添加は着火促進になる.冷炎を生成する低温度酸化反応場にホルムアルデヒドが添加されると冷炎まえ反応は抑制される.天然ガスには冷炎を生じさせるn-ブタンが含まれている.n-ブタン等の冷炎を発生させる成分が含まれる混合燃料へのホルムアルデヒド添加も着火を抑制す.
天然ガス構成成分のなかで最もオクタン価が低いn-ブタンと最も高いメタンからなる混合燃料を用意して,n-ブタンの占める割合によってホルムアルデヒドを添加したときの効果を調べた.さらにメタン/n-ブタン混合燃料で予混合圧縮自着火運転を行い,ホルムアルデヒドを添加剤として加え,n-ブタンが燃料に占める割合によって添加ホルムアルデヒド添加効果の変化を知った.
ホルムアルデヒドを添加したときの着火時期は混合気のn-ブタン含有率によって影響を受けず,ホルムアルデヒド濃度によって決まる.ホルムアルデヒド濃度によって着火を進めることも,遅らせることも可能になる.天然ガスの組成が変動してもホルムアルデヒドを混合気に添加することで,その影響を排除できる.
ホルムアルデヒドを混合気に添加すると燃料の冷炎反応は抑制される.また,着火誘導期のガス組成履歴は青炎支配域でのガス組成履歴と同様のものに替わる.青炎が発生すれば熱炎発生は不可避となる.ホルムアルデヒドの強力な着火制御性はそれが青炎の誘起に効果を与えるために得られると考えられる.現在,バーナー低温度炎や急速圧縮機などを用いて,ホルムアルデヒドが持つ強力な着火制御性をそれぞれ別の手法でさらに詳しく調べ,普遍性が検証された.
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