研究概要 |
燃料を筒内に直接噴射する火花点火機関は,低負荷において現在の20-30%程度の熱効率向上が可能となり,二酸化炭素排出低減に効果がある.しかし,実際の機関においては現象が非常に複雑であるので,もっと単純な場を実現させ,乱流場において濃度勾配のある混合気中を火炎が伝播する様子を系統的に捉えることが必要であると考えた.そこで,本研究では,円筒形の定容容器内に旋回流を生成させ,燃焼室中心部に燃料(プロパン)を供給し,中心で火花点火させることにより,軸対称的な火炎を形成させた.旋回流すなわち,乱れの強さおよび燃料濃度勾配を種々に変化させて実験を行った.乱れ強さはレーザドップラ流速計で,燃料濃度はレーザ誘起蛍光法で測定し,火炎伝播は高速度ビデオで直接撮影した.また,燃焼後の未燃焼炭化水素濃度を波長3.39μmのレーザを用いて吸収法で測定した. その結果,以下のようなことが明らかになった.全体としての燃焼に関しては,(1)平均的な濃度分布が同じで乱れ強さの異なるような条件を見いだし,乱れ強さの影響のみを定量的に把握することができた.(2)全体としての当量比が約0.7以上では燃焼効率は約97%以上であるが,それ以下の当量比の場合,混合気濃度分布と乱れ強さの相対関係により,燃焼効率が30%程度になる場合もあった.(3)特に,中心部に濃い燃料濃度分布が見られる場合,斑点状に輝炎が観察された, また,(4)初期燃焼に関しては,以下のようなことがわかった.すなわち,均一混合気の場合には着火不可能な平均当量比でも着火し,また,中心部付近が濃い場合,あるいは薄い場合でも,均一混合気燃焼の場合よりは燃焼期間が短い.これらは,乱れにより濃度に不均一性が見られるために平均当量比だけでは議論できず,当量比の分布を持つために理論混合比に近い側の当量比の混合気が存在する確率が高いからであると考えられる.
|