研究概要 |
従来の多孔質内の現象は,理論的には主に局所体積平均を応用した基礎式を用いて定式化されている.しかしながら,この局所体積平均の操作を高速熱流動現象に適用するとき,多孔質の微視構造体はコントロールボリューム内で熱的に均一であると取り扱われることになり,極めて早い熱変化に対しては,微視構造そのものの内部非定常温度の不均一性,あるいは微視構造体の熱容量もその表面近傍が効き,変化の時定数に関連して有効熱容量が問題になる.近年,微視的にもより高速の非定常変化が実用に供されるとき,その理論基盤を明らかにしておく必要がある.多孔質としての取り扱いを要しながら,かつ従来よりもはるかに高速な微視構造体の非定常変化の取り扱いが必要なこと,しかもそれは微視構造スケールでの流体のカオス乱流挙動とも密接に関連している.すなわち,多孔質内の乱流においては,構造体を迂回する構造体スケールの渦(擬似渦)と構造体間の間隙スケールの渦(空隙渦)が,流動特性(速度の二乗に比例するForchheimer抵抗)および熱分散(見かけの熱伝導率の上昇)を基本的に支配する. 本研究では,Helc-Shawセル内に柱群を設置することにより多孔質を模擬し,実験および数値解析を行い,主として微視的観点から,(1)固体内温度場,特に有効熱容量概念における高速温度変化の浸透スケールの把握,(2)高速熱流動現象における多孔質内温度および速度変動の計測,(3)多孔質内支配方程式の微視的観点(局所体積平均の時間依存性の観点)からの再検討および再構築を行う.以上により多孔質内のカオス域非定常高速熱流動現象のモデリングを行ったものである. 従来のエネルギー式においては,微視構造体の熱容量が一様に関与するとするものであるが,本研究においてはこの定式化が不適当な場合があることを説明している.なおこの新しい概念は,多孔質内の流体と固体に温度差が存在するとした取り扱いでも同様に適用される.
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