研究概要 |
オゾン層を破壊せず地球温暖化に対する影響の小さい廃熱回収ヒートポンプ用として開発された含フッ素エーテル化合物の新規冷媒ペンタフルオロエチルメチルエーテル(CF_3CF_2OCH_3:HFE245mc)および冷凍機用冷媒として開発された新規冷媒トリフルオロメチルメチルエーテル(CF_3OCH_3:HFE-143m)に関して,水平管内流沸騰および凝縮熱伝達特性を明らかにするための実験装置を製作し実験を行った. 実験装置は圧縮機駆動型とし,二重管式(内面が平滑な内管を試験流体、対向して環状部を熱源水が流れる)の蒸発器と凝縮器を設置し,蒸発(蒸発温度20℃:HFE245mc,0℃:HFE143m)および凝縮(凝縮温度90℃:HFE245mc,45℃:HFE143m)の実験を行い伝熱特性を明らかにし,熱伝達の予測方法を検討して以下の成果得た. 1.沸騰・蒸発熱伝達の実験によって得られた局所熱伝達係数の測定値は著者らの提案している予測式(森ら,冷空論,16-2,177(1999))と測定条件範囲で全般に良く一致しており,HFE245mc,およびHFE143mは従来の冷媒と同様の伝熱特性を示すとみなすことができ,従来の冷媒に対する熱伝達整理式が適用可能である. 2.凝縮における熱伝達係数の測定値は,従来の冷媒に適用可能な原口らの式(機論,B編,60-574,2117(1994))による算出値と良く一致しており,HFE245mcおよびHFE143mは凝縮の場合も従来の冷媒と同様の伝熱特性を示すものとみなしてよい. 3.HFE245mcの熱伝達係数は従来廃熱回収ヒートポンプ用として使用されていた冷媒CFC-114と伝熱性能を比較したところ,沸騰・蒸発の場合25%〜45%程度大きく,また凝縮の場合には,高い液体質量流量比の領域でほぼ等しい値を示すものの,低中流量比の領域では15%程度大きい値を示しており,伝熱性能上HFE245mcがCFC-114より劣ることはないことがわかった 4.HFE143mの熱伝達係数は冷凍機用冷媒として使用されているHFC-134aと伝熱性能を比較したところ,沸騰・蒸発および凝縮のいずれの場合においても,実験範囲の全般にわたってほぼ等しい値を示しており,熱伝達においてHFE143mがHFC-134aとほぼ同じ性能を有することがわかった. 5.次世代冷媒HFE245mcとHFE143mの沸騰と凝縮の熱伝達は,いずれも従来の冷媒と同様に取り扱ってよく,また代替対象冷媒,CFC114またはHFC134aと比べて,いずれも伝熱性能の点で劣る事はない. 6.伝熱性能の向上を図る目的で管内面に微細なら旋溝を施した管(溝付管)を用いて、HFE245mcおよびHFE143mについて沸騰および凝縮の実験を行っているところである.
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