研究概要 |
近い将来きわめて厳しい排気ガス規制が予定されているエンジンについて,それに対処できる新燃焼法の可能性をもつ予混合圧縮自着火燃焼の現象解明のため,新しい数値解析法を開発した.従来の手法は位相平均量を扱うReynolds平均(=乱れ平均)輸送方程式に自着火反応を組み合わせるもので,得られる位相平均結果から燃焼の進行を理解することは困難であった.本研究では数値格子平均量を扱うLES手法に自着火反応を組み合わせ,格子寸法の解像度で空間・時間的に変動する自着火過程を直接にシミュレートする解析法を試みた. この手法の問題は初期条件における瞬時乱流場を統計的に合理的に与える点にあり,これに対する解決法を考案した.この方法は最初に乱数により与えた乱れ場が基礎式を解くことによって次第に流速相関を形成することに着目したもので,設定したい乱流エネルギレベルを人工的に維持させながら,適切な乱流減衰率が得られるまで助走させる事を基本とする.言い換えれば,乱流エネルギの条件のみ与えて,基礎微分方程式自身にその燃焼室における空間相関を計算させる事を意味する. 新しい初期条件設定方法を用い,縮小反応モデルを組み合わせたLESによって予混合自着火過程をシミュレートした結果,燃焼室全体の巨視的な量である圧力変化,平均温度,熱発生率についてについてはReynolds平均輸送方程式による結果とほとんど同じであった.自着火開始点の空間的な出現については,これまでに実験観察で知られているように空間的にまばらに現れる特徴を良く表す事がわかった.一方,従来のReynolds平均輸送方程式では広い領域でなめらかに分布した自着火状態が計算され,実際をほとんど再現できないことがわかった. 本研究で開発した新しい数値解析手法は,実験結果と比較検討して予混合圧縮自着火燃焼を理解するのに役立ち,制御法を検討するための有用な手法になると考えられる.
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